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エジプトの思い出 後編
アッサラーム アレイコム

 エジプト女ふたり旅。文化の違いに最初はとまどってばかりだったけれど、3日もすれば買い物もだいたいの相場がわかってくる。積極的に行動もできるようになる。
後編の今回は、小さな出来事をちまちまと書いてみます。


裏通りのお店(100ピアストル=1ポンド=約20円)

 観光客の多い表通りのお店で売っているものに値札はついていない。すべて交渉。とにかく値引き交渉しなくちゃいけない。ま、どの商品もだいたい2ポンド~10ポンドではありますが。
 しかし、空港からカイロ市内までのタクシー代が、30分くらいで5ポンドほどだから、それを基準とした場合、ボッたくってるのが見え見えな商品ばかり。いくら日本円にしたら無茶苦茶安いからって、言い値でそのまま買うのは許せない。
 ところで、そんなに値引き交渉ばっかりしなければ買い物ができないのならば、カイロ市民のみなさんはさぞ毎日買い物に労力を使っているんじゃないかと思い行ってみました裏通り。
 とりあえず行ったのは、食料品を売っている青空市場だったんですけどね、なんと、全商品にちゃんと値札がついていました。
 ところが、値札に書かれている数字は50とか60とかの、かなりデカイ数字。「えー! 庶民市場の方が高いのーっ?」って思っていたら、実は単位はピアストル。ポンドの下の単位でした。さらによくよく見渡してみると、1ポンドを超える値札はまったくなし。やっぱり大通りは観光客値段なのね。

ボールペンの思い出

 エジプトに行くときはボールペンを大量に持っていったらいいですよ。何でかはまったく不明なんですが、エジプト人はおしなべてボールペンに反応するんです。もちろんまったく使えなくなった空のボールペンでいいですからね。
 市場で値下げ交渉をするときに一番効果を発揮します。
「これ、安くしてくれたらあげるよ」って素振りを見せると、みんな鼻の穴を広げてコーフン状態になりますから。4色ボールペンなんか見せた日には、それはもう鼻血吹き出すんじゃないかっていうくらい興奮しますからね。それを見るだけでも楽しい。
 でもホントになぜボールペンなのかはまったく不明です。空になった100円ライターでもいいみたいです。

みんなハーハーいってるのは、なぜ?

 エジプトの男たちってのは、とにかく触ってきます。もう、体中ベタベタ触ってくるから頭に来てしょうがない。
 一緒に写真を撮るからって横に並ぶとサワサワしてくる。お店に入っても商品の説明をする振りをしてピッタリくっついてくる。
 なぜそうなってしまうのか。イスラム教徒は宗教上女性と接する機会がありませんから、男性は慣れていないんですね女性に。しかも、同じイスラムの女性とは目があっただけで、その家族に殺されかねませんから絶対に近づきません。結果として女性への興味は異教徒である観光客に向くわけです。
 しかし、触られたりするのは女だけのときだけみたいで、男の人と一緒ならば触られることはないようです。
「ヤバーニ(日本人)?」って訊かれて、イエスなんて答えようものなら、とたんに「ケッコンシテクダサーイ」の連発。一夫多妻が認められているイスラムでは、奥さんがいても「ケッコンシテクダサーイ」らしい。もし結婚できたら日本のビザが自由にとれるからね。信じられないけど、それがきっかけで結婚した日本人女性は意外と多いそうです。
 そういうふうに声をかけられることがイヤな場合は、「アイアム チャイニーズ」とか「コリアン」っていっておけばOK。黙っていたらついてくるから。それから「私はすでに結婚しています」とか「愛する旦那様がちゃんといます」ってウソでもそういえばどこかへ行っちゃう。
 あるとき入ったお土産屋で、奥から出てきたツルッぱげの店主がなぜかハーハーいっていた。別に体の調子が悪い訳じゃないらしいんだけど、やっぱり私たちにピッタリくっついてきてハーハーいいながら汗をダラダラ。そのうちどんどん前屈みになってきて目がギラギラしてきた。さすがにマズイと思った私たちは走って逃げました。後ろで何か声が聞こえましたが無視して逃げました。

ヨーロッパよりまし

 エジプトの観光客用市場で売られている商品には値段が付いていません。店員がふっかけてくる値段は本来の値段の倍以上と思われますが、そこは交渉です。
 ボールペンを見せたり、ほっぺにチューしてやったりするとどんどん値段が下がっていきます。それでも納得できなかったら「いらない」っていって出てくればいいだけですから(そしたらあわてて追いかけてくる)。
 エジプトでの買い物は「それに興味を持っていることをさとられない」ようにすること。「すごく欲しい」ってことが顔に出たら、絶対安くならない。「別にいらないけど、そんなに買えっていうんだったら、しょうがないから買ってやるか」という態度がベスト。
 それから変に日本語を覚えているのもいて「シャンコデシェンエーン」とかあちこちでいってる。何だかわかんないけど「タカイヨー タカイヨー」っていって客引きしてるのもいた。仲良くなった日本人にウソ教えられたんだなあって思うと、ちょっと微笑ましいかな。

 ボッタクリの多いエジプトですが、私の印象としてはヨーロッパよりかはマシな気がします。
 ヨーロッパのお店は、値引き交渉なんかありませんが、お釣りを誤魔化してくるんです。
その国の通貨に慣れていない外国人には、平気でやってきます。即座に文句をいえば「ゴメンゴメン」って感じで返してくれますが、緊張している状態ではムリ。少なくとも私は後から気づくってことばかりでした。
 でもこれって、ボッタクリじゃなく犯罪ですよね。

Tシャツの思い出

 エジプトで買ったお土産で一番衝撃的だったのは何といってもTシャツ。ファラオの絵とヒエログリフの描いてある、いかにもエジプトっていう感じのTシャツです。
 日本に帰ってきてからも喜んで着てました。当然汚れますから洗ったんですけど、洗濯したら溶けました。
 ?!
 洗濯機に残っていたのはTシャツの端切れだけ。しかも、端切れを合わせても元の半分にもなりません。残りはどこへ行ったの?
 やっぱり溶けたの? これって溶けるTシャツだったの?

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 さて、前々回、前回今回とエジプトのことをボロクソに書いてきましたが。それは今までの海外旅行で最高に印象深かったからかもしれません。
 中東の国はどこもみんな親日です。そしてエジプトも親日です。日本人には親切です。やな思いもいっぱいしましたが、それは私がエジプトをよく知らなかったからです。
 カイロ、アレキサンドリア、ルクソール、アスワン、アブシンベル。それらの街の街角を曲がるたび、違う色の風が私を追い越していきました。
 それは砂埃をたくさん含んでいましたが、湿度の低い爽やかな熱風でした。


 それにしてもピラミッドとか王家の谷とか、観光地についてまったく書いていませんでした。それらはまたあらためて書きます。

ショクラン

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エジプトの思い出 中編
アッサラーム アレイコム

 エジプトに行って何に驚くかっていえば、バクシーシの異常なまでの要求。でもそれは2~3日で慣れる。大喧嘩することにも慣れれば、走って逃げることにも慣れる。そしていつのまにかエジプトに馴染んでいる自分に気がつくのです。
 結婚前に女友達と行った、「エジプト女ふたり旅」。日本では味わえないファンタジーに気分は西方見聞録の「クミコ・ポーロ」か。
「エジプトの思い出」中編です。



タクシーの思い出

 それはカイロタワーを見学して外に出たときのこと。町中ではどこを歩いていてもタクシーの運ちゃんが声をかけてくるんだけど、そのときはなぜか運ちゃん同士でケンカしてたのよ。何でケンカしてるのか、おもしろそうだからしばらく見てたんだけど、どうやら客引きのために停まっていたタクシーに、別のタクシーが接触してミラーがとれたってことらしい。
 そういえば、タクシーってたくさんいるけど、ミラーのないタクシーが結構多い。ケンカしてる割にはなくても別にいいみたい。
 カイロの道路って幹線道路はたいてい片側5車線。前も横もギッシリ。もう車があふれかえっている感じ。その状態でものすごい勢いで走っている。
 乗っててすごく怖い。だって窓を開けて手を伸ばせば、隣を走っている車のドアを開けることができそうなんだもん。
 前との車間距離も異常。ナンバープレートが見えないほどくっついているからね。そんな状態で時速100キロくらいのスピードで走っているんだから。
 ちなみに別の日、空いているときに同じ道を通ったら、片側3車線でした。

20050622105756.jpg
空いている時間帯にバスの中から。ちなみにここは片側2車線。



道路を横断するときは命がけ。

 横断歩道ってあんまりなかったような気がするなあ。ほとんど記憶にないもん。もちろんあってもないのと同じだと思うけど。だって信号だってあんまり役に立っていなさそうだったから。
 そんな道を横断しなきゃなんないときがたまにあるのよ。でも、日本みたいに思っていたらトンデモナイ目にあったからね。
 エジプト人は人がいても止まる気なんてサラサラなくて、渡れるもんなら渡ってみろっていう感じ。人が渡りそうになるとスピードあげる。ちょっと引っかけたくらいじゃ謝罪も何も絶対ない。反対に「バカだーコイツ」って感じで指さして笑うからね。
 一歩足を出して引っ込め。足を出して引っ込め。ぜんぜん渡れない。ところが、不思議なもんで、杖をついているようなおじいちゃんがスイスイっと渡っていく。真似をしようとしてもムリ。
 どうしようもなくてオロオロしてたら、突然知らないオジサンが私の手を引っ張って渡らしてくれた。どうも見るに見かねたらしい。
 その後も横断しそうな人を見るたびに、どうやって渡るのか観察してたら、どうやら、上手に渡るためにはコツがあるらしいことに気がついた。
 それは「引けるものなら引いてみろ」っていう覚悟を持つこと。

「渡れるものなら渡ってみろ」 VS 「引けるものなら引いてみろ」

 おどおどしながら横断すると、「どけーっ! バカヤロー!!」って感じで蹴散らされる。でも、胸を張ってズンズン進んで、すごい勢いで車がつっこんできても、「おー?! 引けんのか? やれんのか?」って感じでにらみながらいくと渡れる。それがコツ。もちろん最後までできませんでした。


ラクダの思い出

 ラクダといえば、「月の砂漠」のあのラクダのイメージ。そのラクダがいっぱいいるところがカイロの町中にあるっていうんで見に行ってきました。
 そこはラクダ市。砂漠を渡る商人なんかがラクダを買いに来るところ。きっとそこは観光客が行かないエジプト。そして、そこなら砂漠を渡るキャラバンの雰囲気を味わうことができると思ったのです。
 ところが! そこで見た光景は私が単なる観光客で、何にも知らない甘々の日本人でしかなかったことを思い知らされたのでした。
 タクシーの運ちゃんに「ラクダ市に行ってくれ」って伝えたとき、運ちゃんがアラビア語で何かごちゃごちゃいった。
 そのときはわからなかったけれど、たぶん「何でそんなところに行くんだ?」「やめといたほうがいいんじゃないか?」って、今思うといっていたような気がする。

 ラクダ市。そこで見たものは。一面の血の海だった。
 それは、確かにラクダの売買ではあった。しかし、キャラバン用のラクダを売り買いするところではなかったのです。
「しょ、食用の方だったのね」
 むせかえる血の臭い。とさつ場が併設されていたなんて……。

 日本では牛、豚、鳥の肉を普通に食べていましたが、それらが殺されているんだということにまで考えが至ることはありませんでした。いや、考えないようにしていただけかもしれません。
 しかしここで見た光景は、目の前で殺したラクダを目の前で解体し、庶民が買っていく。「キャー」とか「ザンコクー」なんて言葉は一切出てきませんでした。

20050622105812.jpg
通常の庶民市場。ラクダ市の写真は撮れませんでした。




 今回はこのへんで。


ボクラ

エジプトの思い出(くみ)
ガーガーピーーーーッ!
アッラーフアクバル! ゲホッゲホッ! アッラーフ……ゲホッ…アクバル! ピーーーーーッ!!
 カイロの朝は礼拝を求めるスピーカーのがなり声で始まる。

 ま、これって朝だけじゃないんですけど、このスピーカーが町のいたるところにあって、ホテルの部屋のすぐ外にもついていたのよね。
 寝てられるわけないって! ガーガーピーピーっていってるだけでもうるさいのに、ゲホッゲホッ、カーッペッ! っていう音まで入ってくるんだから。せめて咳をするときくらいはスイッチ切ってやれっていうの。

 えへへへへ。 いきなり怒り爆発って感じですけど、そんな怒りも含めて今は何だか懐かしいのねー。
 いわゆる非日常なんですけど、トンデモナイ非日常。例えばヨーロッパやオーストラリアは日常の延長線上にある非日常。それに比べてエジプトは求めていない非日常ってところかな。
 異文化よ異文化。私にとってはまるで異世界。でも、けっこう日本語が通じるところがいいんだか悪いんだか。
 そんなエジプトの思い出。「宝石・鉱物おもしろガイド」に書いたことをもう一度書いても芸がないので、それ以外のことを書いてみまーす。
 そうそう、この話は結婚する前の話。友だちとの女2人旅でのお話です。
 それにしても、すんごくイヤだったんだけどまた行きたいなー。


20050615105547.jpg
この後とんでもないことに



その1 バクシーシの思い出

 バクシーシって喜捨(きしゃ)って日本語では訳されているけど、それって本当は何なのよ。
 もともとは「富める者は貧しき者に富を分かち与えよ」っていうコーランの教えだそうですけど、今ではもう完全に歪んでる。
 まずチップでないことは確か。チップは「何かの行動に対する対価」ってところだけど、バクシーシは「何かの行動」がない。ただ「くれ」っていうだけ。歩いていてもすれ違いざまに「バクシーシ、バクシーシ」って。
 だから、市場とか観光客の多いところにはいっぱいいる。観光客は「富める者」だから。
 それでも以前に比べると、ただのバクシーシは減ってきているみたい。私もそうだったんだけど、ほとんど無視されるからじゃないかな。だから、とりあえず何かをやって、その対価としてバクシーシを要求するみたい。チップに近づいてきたってところかしら。
 でも、チップと圧倒的に違うところ。それは「そんなこと頼んでないっ!」ってことを勝手にやってバクシーシを要求してくること。
 お店に入ろうとしたら、後ろからスッとやって来てドアを開けてくれるのよね。そしてバクシーシ。
「ドアくらい自分で開けられるわいっ!」
 無視したら無視したになるんだけど、どこへ行ってもそんなのばっかり。そのうちめんどくさくなって、「ドアを開けられたら入らない」ってことにしたもの。

 一番困ったのは、料金なのかバクシーシなのかわからないときがあること。
 例えば市場の雰囲気を写真に撮ろうとするじゃない。カメラを向けると、そこにいるエジプト人が必ずポーズをとるのよ。別に雰囲気を撮りたいんだからそんなことしてほしくないんだけど、でもどこ向けてもみんなポーズをとるの。それで、しかたがないからシャッターを押すと追いかけてきて「金払え」。
「ピラミッドの前をラクダが歩いている」ような写真とかも撮りたいじゃない。ところが「写真撮られた」って気づかれたらもう大変。肖像権だか何だかわかんないけど「金払え」ってくるの。
 そんなの料金設定なんかされてないんだし、交渉なんかしてないんだから、料金なのかバクシーシなのかわかんない。
 それでいて払わないでいると怒り出すんだから。何度も「払う払わない」のいい合いになったもの。
 そんなときは走って逃げるの。そしたらめったに追いかけてこないから。
 実は政府のお達しが出てるらしいのよ。「そんなことばっかりやってるとイメージが悪くなる」から「やるな」って。ということはそれを無視してやってるってことになるから、あんまり大げさにはできないのよね。
 でもね、逃げるときにはなるべく早いうちに逃げなきゃダメ。そうじゃないとエジプト人が集まって来て囲まれちゃうから。普段は日本人だからってチヤホヤしてくれるエジプト人も、ケンカしてるのが同じエジプト人だったら、理由に関係なく仲間のカタを持つからね。そうなったらもう逃げられないから。

 というわけで、バクシーシって何なのでしょう。
「ほどこし」? そう基本的には「ほどこし」なんでしょうね。
 でも違う。今は違う。今は絶対 「ほどこせ」よ。

 あー、バクシーシだけでこんなに長くなっちゃった。続きはまた今度ってことで。

                                     インシャ アッラー



PROFILE
辰尾良二&くみ子
  • Author:辰尾良二&くみ子
  • メール tatsu348@hotmail.co.jp

    鉱物採集は「水晶に始まり水晶に終わる」なんていわれていますが、私たちはガーネットが始まりでした。
    鉱物が大好きなカミさんに連れられて、初めてやった採集がガーネット。土をフルイに入れ水に沈めると、中から真っ赤な丸い粒がっ! 感動しました。

    トップの写真は、カエルのぬいぐるみドン・ケローネの「けろりん」です。
    ケローネ写真館はこちら。http://www.k4.dion.ne.jp/~tatsu348/kerohp/kero.html
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